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最高裁判所第一小法廷 昭和29年(オ)660号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第一点及び第二点、所論原判示の趣旨は、仮に上告人が約束手形の振出人としてその受取人である訴外繊維貿易公団に対し、所論売買の無効を理由としてその売買代金支払のため振出された手形金支払の義務なき旨の人的抗弁権を有するとしても、手形保証人である被上告人は、手形保証という手形行為をすることによつて独立に手形上の債務を負担するに至るものであるから(手形の振出自体に方式上の瑕疵がない限り)、被保証人である上告人が手形所持人である前記訴外公団に対する関係において有する前記人的抗弁を援用することは許されないとしたものである。そして、これは民法上の保証の理論と異る手形保証独立の原理を示したものであつて、被上告人は前記人的抗弁を知る場合においてもこれを援用することを得ないとしたのは、もとより正当な見解である(手形法三二条二項)。それ故、論旨は採ることを得ない。

同第三点、権利濫用の所論は、独自の見解に過ぎないものであつて、当裁判所としてはこれを是認することはできない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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